債券ETFと米10年国債利回りの相関を調べた。JNKと長期金利に相関無し

はじめに

これまでの調査で、LQDと米10年国債利回り(以下TNXと略す)に逆相関の関係があることを確認し、線形モデルを算出しました。LQDに関してはこれで売買の戦略を立てれそうですが、先日新たに打診買いしたJNKは更に調査が必要だと感じています。

JNKはジャンク債を投資対象とするためか、金利低下局面でも株価が大幅に下がることがあり、チャートを見ても長期金利との相関がイマイチはっきりしません。

折角の機会ですし、代表的な米国債券ETF3種と優先株ETFについて長期金利との相関を調べてみることにします。

今回調査対象とするのは以下の4本です。

ティッカー 名称 投資対象
AGG iシェアーズ コア米国総合債券ETF 米国債券市場全体
LQD iシェアーズ iBoxx 米ドル建て投資適格社債ETF 投資適格社債
JNK SPDR ブルームバーグ・バークレイズ・ハイイールド債券ETF ハイイールド債券(ジャンク債)
PFF iシェアーズ 米国優先株式ETF 米国優先株式

PFFは優先株式を対象とするETFであり債券ETFではありませんが、分配金利回りや値動きがJNKに近いため調査対象に入れました。

調査方法など

調査に用いたソフトとデータ入手元は以下のとおり。

使用ソフト:R version 3.5.1

データの入手

  • 米Yahoo Finance より各ETFの株価データを入手
  • 全て月次データ。解析にはAdj CloseではなくCloseを用いる
  • 期間は 2007年12月1日~2018年10月16日 ※JNKの設定日から現在まで

単位根検定

各ETFの株価データは単位根過程の可能性が高く、そのまま回帰分析を行うと「見せかけの回帰」により誤った結果が出る恐れがあります。そこで株価データの一階差分を取り、単位根を持たないことを確認した上で相関分析に移ります。

各データ系列とその一階差分の検定結果は以下のとおり。

単位根検定の結果(tseries adf.test関数を使用)

データ系列 p値 判定/備考
JNK 0.01 単位根無し? 注1
PFF 0.01 単位根無し? 注1
LQD 0.5845 単位根有り
AGG 0.7735 単位根有り
TNX 0.4814 単位根有り
djnk 0.01 単位根無し、JNKの一階差分
dpff 0.01 単位根無し、PFFの一階差分
dlqd 0.01 単位根無し、LQDの一階差分
dagg 0.01 単位根無し、AGGの一階差分
dtnx 0.01 単位根無し、TNXの一階差分

注1:関数PP.test() だと単位根あり

PFFとJNKは微妙な結果となりましたが、TNXやLQD,AGGはやはり単位根過程でした。一階差分は全て単位根を持たないことが確認できたので、予定どおり一階差分で回帰分析を行います。

相関検定

上で説明したように株価データは使えないため、元データの一階差分(前日からの変化率)同士の相関を調べます。

TNXと各ETFの相関検定の結果は以下のとおり

ペア p値 cor(相関係数) 判定 備考
dtnx vs djnk 0.5657 0.05064377 × 相関無し 注2
dtnx vs dpff 0.5293 -0.05545545 × 相関無し 注2
dtnx vs dlqd 1.615e-10 -0.5220085 逆相関あり
dtnx vs dagg < 2.2e-16 -0.8257434 逆相関あり

※注2:pが大きいため帰無仮説を棄却できない。よって相関があるとは言えない

PFFはともかく、JNKは債券ETFなので長期金利と逆相関だろうと思っていたのですが、予想に反して JNKと長期金利に相関は確認できませんでした

数値だけだと分かりづらいので、以下の散布図をご覧ください。
以下は各データ系列の散布図をマトリックス表示したもので、散布図に傾きがあれば相関(或は逆相関)が有る事を示しています。

債券ETFと米10年国債利回りの相関

※上図の赤枠がJNKとTNXの散布図です

以前検証したようにLQD、AGGの2本はTNXと明確な逆相関が見て取れますが、JNK、PFFに関してはTNXとの散布図に相関が見られません。

これらの関係は株価チャートでも確認することが可能です。例えばLQDの動きを5倍すると、TNXとほぼ上下対象となるので、逆相関だと分かります。

TNXとLQD x 5倍

TNXとLQDx5の比較

これに対しJNKの動きは微妙です。TNXと逆行する部分もあれば、TNXに連動している部分も多々あり、逆相関とは言えませんね。やはり今回の相関検定の結果が示すように、長期金利との相関は無いということでしょう。

JNK/LQDとTNXの比較

まとめ

主な米国債券ETFと長期金利の相関関係を調べ、AGG, LQDの2本に関しては米10年国債利回り(TNX)と明確な逆相関を確認できました。

しかし事前の予想に反し、JNK, PFFの2本については長期金利との相関を確認できませんでした

これまでの調査から債券ETFと長期金利に逆相関があることは把握していました。当然JNKも長期金利と逆相関だろうと考えていたため、今回の調査結果は驚きです。

この結果を踏まえれば、長期金利の動向からJNKの値動きの見通しを立てれない、という事になってしまいます。

私としては「現在の金利上昇局面ならJNKも下落していく可能性が高い」という前提でいたので、売買戦略を見直すしかないようです。

JNKと長期金利に相関が無いのは何故か

債券ETFであるにも関わらず、JNKと長期金利にはっきりとした相関が無いのは何故でしょうか。

一つ考えられるのは、金利低下局面と(債券の)デフォルト率上昇の同時進行です。

景気拡大時はインフレ抑制のために利上げを行い、景気低迷時には利下げで金融緩和、というのが金利政策の大きな流れでしょう。金利低下は債券ETFには価格上昇要因であり、実際LQDやAGGの株価は金利低下局面で上昇しています。しかし景気低迷時にはジャンク債のデフォルト率が急上昇するためJNKはむしろ株価が下がってしまう、という訳です。

債券ETFなので当然、JNKも長期金利と逆相関だろうと思い込んでいたのは失敗でした。思い込みで判断せず、徹底した検証が必要ということでしょう。

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